□醤油作りに対するこだわりは どんなことですか? 小豆島で、昔ながらの天然醸造と杉樽仕込みのこだわりを代々受け継いできました。 うちのもろみ蔵は、100年以上前(明治初期)に建てられた蔵で、国の登録有形文化財にも指定されています。 木造平屋で床は土間、壁は土壁からなっており、見た感じボロボロですが、樽と同じく、梁や土壁、土間のボロボロの部分にこそ、何百種類という酵母菌や乳酸菌たちが暮らしているんです。つまり蔵は昔からずっとここで暮らしている菌たちの家、生きてる蔵なんです。
蔵を大きくしたくても建て替えがきかないので、手を加えながら少しずつ大きくするしかありません。手がかかりますが、土壁、柱、杉樽、土間に住む百数十年前からの酵母菌、乳酸菌の子孫達が、美味しい醤油を造っているんです。
陽の当たる場所、当たらない場所で、一樽ごとに微妙に味も違います。 人にそれぞれ性格や個性があるように、樽にも一つ一つ性格や個性があります。太陽の光の当たり方や、菌が多く住む土壁からの距離によっても味に違いがでるし、その年の天気によっても味が変わってくる。一樽一樽ぜんぶ味が違う。同じことを繰り返しているように見えて、同じものは一つもありません。そこを微調整しながら、菌の手助けをします。天然醸造はシンプルゆえ、とてつもなく奥が深い世界なんです。
□醤油の「旨み」とは?
人間は、「コク」や「まろやかさ」といった数値化できない微妙な味を感じます。 醤油には、数値化できる味と数値化できない味があるんです。 一般的に醤油の「旨み」はちっ素(N)の数値で表わされます。ちっ素とは主に大豆に含まれている成分で、この値が高いほど「旨み」が高い醤油ということになります。この旨み成分は大豆の熟成途中に、じわ〜っと出てくるのですが、普通の濃口醤油で「1.5」、薄口だと「1.2」、これが「鶴醤」だと平均「2.3」となり、数値の上でも「旨み」が高いことがわかります。
また、塩分濃度においては、普通の濃口醤油が「16〜17%」、薄口醤油が「17〜18%」のところ、再仕込醤油の鶴醤は「15.5〜16.5%」。つまり味が濃厚な割に塩分は低く、醤油のもつ「旨み」がもっとも生かされた醤油ということができます。 しかしながら、旨み成分の数値を高めることは技術的に難しいことではありません。 原料や製法の善し悪しに関わらず、調味料を使ったり、細かく砕いた大豆を使えば、熟成期間を短縮しても数値を高めることができます。ところが人間は、「コク」や「まろやかさ」といった数値化できない微妙な味を感じるんですね。 「味」とは、旨み、辛み、苦み、甘み、香りが、複雑に絡み合った総合技であり、数値だけで計れるものではありません。また、ヤマロクの醤油は、一般に流通している醤油に比べると、数値上のバラつきは多いです。でも「味」のバラつきは少ないと思います。それは、数値以上に人間の「感覚」を大切にしているからです。ヤマロク醤油は目に見えない数値、「おいしさと笑顔」を品質基準にしています。 |